●赤ちゃんの眠りはどのように育つのか

  先に「人生の3分の1は眠り」と書きましたが、生まれたての赤ちゃんは、一日当たり16時間も眠りに費やしていると言われています。つまりこの時期は「3分の2」が眠りなのです。しかも、2から3時間の短い眠りを何回も繰り返し、大人とは違って、ハッキリした1日のリズムがありません。この「1日のリズム」は、むずかしい言葉で言うとサーカディアン・リズムと言って、脳の中の「体内時計」によって刻まれているリズムのことです。つまり、生まれたての赤ちゃんには、この体内時計によるリズムがまだハッキリと備わっていません。(図1)図_1
 
ところが生まれてから2ヶ月の終わりごろ(生後7週ころ)から、赤ちゃんの眠りが急に変化をします。夜と昼のメリハリが生まれ、昼には起きている時間が長くなり、夜にはまとまって眠れるようになってきます。この生後2ヶ月の終わりころには、眠りだけではなく、いろいろな事が変化します。
 生まれたての赤ちゃんはあやしても笑いませんよね。
ところが、この2ヶ月の終わりを境にあやされたり、人の声を聞いたりすることで、ニッコリと笑うようになるのですが、この笑いの事を「社会的微笑」と呼びます。
 また、それまではできなかった、手に持った玩具を口に持ってきてしゃぶることが出来るようになったり、目の前のものを目で追うときに、スムーズな目の動きで追えるようになったり、さらには、脳波のパターンも変化してきます。
 このように、眠り(意識)、社会的微笑(認知)、おしゃぶりや目の動き(感覚・運動)、脳波(脳自体の活動)など、非常に広い範囲で変化が同時に起こりますが、おそらく、その背景には、脳自体の急激な成熟があるのだと考えられます。
 さらに、この生後7週という時期は、実は、出産からの時間ではなく、精子と卵子が出会う受胎の瞬間をスタートとして決められているらしいことが私たちの研究で分かってきました。
 つまり、生後少ししてからの眠りの成熟は、受胎をスタートとするほとんど自動的なプログラムによってコントロールされていると考えられます。もう少し分かりやすく言えば、赤ちゃんがお腹の中に出来た瞬間から、眠りの発達のレールが敷かれ、眠りの発達はそのレールの上をちゃんとスケジュールどおりに進んで行くものと考えられるのです。